診療科・部門・センター紹介診療部 消化器内科

肝疾患の診断と治療

1:肝臓の病気の原因

肝臓疾患の原因には、肝炎ウイルス・アルコール・薬剤・自己免疫性・代謝性などがあります。この中ではウイルスによるものが圧倒的に多く、治療を要する急性肝炎や慢性肝疾患の大部分を占めます。また近年、食生活の欧米化に伴い生活習慣病の一つである非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:Non-Alcoholic Steatohepatitis)が注目されてきています。

2:肝臓の病気の経過

急性肝障害と慢性肝障害に分類されます。急性肝障害は一過性で劇症化に至らなければ、多くは後遺障害を残さず治癒します。慢性化した場合、病気の原因にもよりますが、あるものは軽い肝障害で終わり、またあるものは慢性肝炎、肝硬変へと進展します。問題はウイルス性慢性肝炎が肝硬変へ進展し、肝癌を合併しやすいということです。劇症肝炎は正常の肝臓に短期間で広範な壊死が生じ、進行性の黄疸、出血傾向及び精神神経症状(肝性脳症)などの肝不全症状が出現する病態で、全身の合併症を併発し、多臓器不全(MOF)に陥る場合もあります。重篤な状態ですので、血漿交換などの肝臓機能の補助療法と同時に集中的な治療が必要となります。

3:肝臓の病気の診療

当科では、急性肝炎、慢性肝炎・肝硬変から原発性肝がんまで幅広く診療しています。これらの病態に対する診断や治療法は近年めざましく進歩してきており、患者さまの予後が大幅に改善されています。

B型・C型肝炎

次々と開発される新たなB型肝炎,C型肝炎治療薬を導入し、命に関わる劇症肝炎では,的確で早急な診断により血漿交換を含めた集学的な治療を行っています。
B型肝炎に対しては、核酸アナログ製剤およびインターフェロンによる治療を積極的にしています。B型肝炎ウイルス・キャリア(肝障害は越していないが、B型肝炎ウイルスを保有している状態)では低率ながらも原発性肝癌の発生の危険性があるので、半年に1回定期的に採血と画像診断(腹部超音波検査や腹部CT検査)を行って早期発見に努めています。
C型慢性肝炎に対しては これまでは効果があっても副作用の多かったインターフェロン治療に変わって、副作用が軽微な経口抗ウイルス薬治療のみの治療でほとんどのC型肝炎が治癒する時代になっています。C型肝炎ウイルスの遺伝子に作用してウイルスを消滅させる直接作用型抗ウイルス剤(DAA:Direct Acting Antivirals)は、現在5種類の製剤が認可されています。3カ月継続して服用するため高額となりますが、診断申請による公費助成制度がありますので、専門医にご相談ください。
B型・C型肝炎ウイルスが消失して慢性の肝炎が改善しても、原発性肝がんの発生がなくなるわけではないので、定期的な血液検査と画像診断が必要となります。

自己免疫性肝炎

自己免疫性肝炎(AIH)や原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)など自己免疫性肝疾患の診断治療は,患者さまの病期に応じた適切な治療を行います。

脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)

脂肪肝とは肝臓の細胞に中性脂肪がたまる病気で、食習慣の欧米化に伴う肥満の増加により、成人の20%で見られるようになりました。アルコールも原因の一つですが、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)と非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が注目を集めてきています。NAFLDは内臓肥満からくるメタボリック症候群(内臓脂肪、高血圧、糖尿病、高脂血症)が肝臓に現れた状態で、心疾患、脳卒中などによる血管障害による死亡率が高くなるとされています。
NASHはNAFLDの約10%にみられる病態で、慢性的に炎症が進行して肝硬変、肝がんに進展する危険があります。組織学的にはアルコール性肝炎に類似した炎症や線維化を認めますが、血液検査や画像診断(腹部超音波、腹部CT検査)だけでは脂肪肝と区別することが困難で、造影剤を使用した超音波(副作用はほとんどありません)や肝生検を行って診断することが必要です。治療法は、慢性肝障害が増悪しない早期に確定診断を行って、食事療法と運動療法を継続していくことが大切です。

原発性肝細胞癌(HCC)

肝臓癌の高危険群(ウイルス性慢性肝炎とウイルス性肝硬変)に対しては、定期的に血液検査・腫瘍マーカー(αフェトプロテイン[AFP]、PIVKAⅡ)ならびに画像診断(超音波検査は3~6ヶ月に1度、腹部CT・MRI検査は6~12ヶ月に1度)を行い、原発性肝癌を早期に発見できるよう努めています。
発見された肝癌に対しては、外科的な肝切除術、肝動脈塞栓術(TACE)、ラジオ波焼灼術(RFA)をはじめ、分子標的治療薬、化学療法も行い、患者さまの病態に合わせた集学的な治療を行っています。特殊な治療として粒子線による照射療法があります。治療方針は外科医と定期的にミーティングを開いて、肝機能の状態や基礎疾患の状態を十分に検討したうえで、適切な治療を選択して実施しています。

ラジオ波焼灼術(RFA)

肝動脈塞栓術(TACE)