消化器内視鏡センター

早期食道癌・早期胃癌に対する内視鏡治療

悪性病変(がん)の早期発見と早期治療の必要性

消化管に悪性病変(がん)が発見された場合は、以前には外科的にがん病巣を摘出するしかありませんでした。胃がんであれば、がん病巣を含めた胃の半分か全部を摘出し、周囲のリンパ節を郭清して、残胃もしくは食道と空腸を吻合する術式となります。がんの特徴である、リンパ節や肝臓などの臓器に転移することを防ぐためですが、手術自体が身体的な負担となり、術後にもいろいろな合併症が起こることがありました。多くの先駆的な研究者によって、早期のがんでは転移のがないことが明らかにされ、内視鏡検査機器や処置具の性能が向上し早期にがんを発見する検診などが普及することによって、内視鏡治療が可能な早期癌が多く発見されるようになり、癌を治すというだけでなく、患者さまの生活の質(QOL)に配慮し、臓器を温存してより侵襲の少ない治療を行うことが重視されるようになってきました。内視鏡を用いた局所治療のみで治療できる可能性があります。これまでは、内視鏡的粘膜切除術(EMR)が行われてきました。

内視鏡的粘膜切除術 (EMR:Endoscopic Mucosal Resection)

内視鏡的粘膜切除術 (EMR)はループ状のワイヤ(スネア)を病巣の根元に引っかけてワイヤを締めた状態で高周波電流を流して焼き切る方法ですが、一度に切除できる大きさに限界があって完全に取り切れずに再発したり、適正な病理診断が行えないという限界がありました。最近では内視鏡検査機器がさらに向上して、NBIや拡大内視鏡による観察が可能で、内視鏡的に治療が可能な早期癌が多く発見されるようになってきました。こうした状況を背景に、2cmを超えるような大きな病変でも確実に一括切除できる治療方法が開発されてきました。

内視鏡的粘膜下層剥離術 (ESD:Endoscopic Submucosal Dissection)

内視鏡的粘膜下層剥離術 (ESD)は、消化管(食道・胃・大腸)の早期がんを内視鏡を使って切除する治療法です。胃がんは2006年、食道がんは2008年、大腸がんは2012年に、それぞれ保険適用となりました。当院でも、積極的にESDを行い、良好な治療成績を得ています。

内視鏡的粘膜下層剥離術 (ESD)の適応は?

消化管のがんの粘膜より発生し、進行とは、周囲に広がると同時に胃壁の下にがんの根が深く潜ることを意味します。根が深く潜ると、転移を起こす危険がでてきます。転移を起こす危険のある癌は、ESDでは根治できません。その境界線が粘膜筋板です。(胃壁の構造は下図を参照)粘膜の下にある粘膜下層には、臓器の外へ通ずるリンパ管や血管が存在します。癌が粘膜筋板を破って粘膜下層へ浸潤すると、このリンパ管や血管を伝わってリンパ節や他臓器へ広がる(転移)する可能性がでてくるのです。そのため、原則的にESDの適応は「粘膜にとどまる癌」となります。ESDは、どんなに大きくても粘膜にとどまる癌なら切除できますし、たとえ小さくても粘膜下層に入る癌であれば適応から外れることがあります。当院では、最新の内視鏡機器を用いて、拡大内視鏡や、超音波内視鏡による精査を行い、適応の判断を行います。また、個々の状況(高齢や持病が重くて手術リスクが大きいなど)によっては、転移リスクを覚悟のうえで病変を切除することもあります。
ESD適応の詳細は医師にお尋ねください。

ESDの実際

内視鏡的粘膜下層剥離術 (ESD)は特殊な電気メスを用いてがん病巣周囲の粘膜を切開し、粘膜下層と筋層の間を直接確認しながら剥離(はくり)・切開して病巣を一括して摘出します。

全身麻酔化のESD

食道、胃のESDは、通常は,鎮静剤による静脈麻酔下で行われますが,鎮静剤の効果は個人差が大きく、呼吸抑制など副作用の危険も伴います。当院では、必要に応じて,麻酔科医師の協力を得て、内視鏡センター内の治療処置室で全身麻酔下にてESDをより安全に実施しています。