■サイトナビゲーション


診療科・各部署のご紹介

診療部|整形外科

第49回”21世紀の健康づくりシリーズ”講演内容
    『腰痛・下肢痛の診断と治療』

副院長 吉田 和也

■  はじめに

ヒトはもともと4足歩行していたのが、進化の過程で直立歩行をするようになりました。そのため上肢(手)が自由に使えるようになり急速に進歩しましたが、一方では重心が高くなる上に重い頭や身体を支える事になり腰椎に無理がかかり種々の問題を抱えるようになりました。腰痛は、人類の宿命とさえ言われており、約80%の人がその生涯の間に腰痛を経験するといわれており、実際整形外科を受診する患者さんの中では腰痛を訴えて来院される人の数が最も多いといわれています。また、腰椎は身体の支柱となっているだけではなく、脊柱管という脊髄や脊髄神経の通り道を形成して神経を保護する役割も果たしています。腰椎の疾患では、この神経が圧迫されて下肢(足)の痛みやしびれなどの症状や、さらには歩行ができないなど生活に大きな支障をきたす場合も少なくありません。今回は特に、下肢痛をきたす代表的な疾患として「腰椎椎間板ヘルニア」と「腰部脊柱管狭窄症」についてお話しをします。


■  腰椎の解剖

腰椎は椎体と呼ばれるブロックが5個あり、それらが椎間関節、椎間板、靭帯を介して連続しています。連続した腰椎は後方に脊柱管という脊髄・神経を通す道を形成しています。脊髄は第1〜2腰椎のレベルで終わり、それ以下は馬の尻尾のような細い神経の束(従ってこれを馬尾といいます)となります。さらにその枝は各椎体の隙間(椎間孔)から左右に1本ずつ出て行き(神経根)、それがまた数本が集まって坐骨神経などの末梢神経となり下肢の運動や感覚、さらには内臓へも枝を出し膀胱(排尿)や腸(排便)の機能も司っています。


■  腰椎椎間板ヘルニア

椎体と椎体の間には椎間板というクッションの役目をする軟骨があります。その周囲は線維輪という硬い軟骨に覆われ、内部には髄核という柔らかい軟骨があります。周囲の線維輪が外力や年齢的な劣化により一部に亀裂を生じ、髄核が飛び出したものを椎間板ヘルニアといいます。これが神経を刺激したり、圧迫したりして下肢に激しい痛みや痺れなどの症状を引き起こすのです。30代から50代の比較的若い人に多い傾向があります。急に発症することが多く、ぎっくり腰の原因の一部を占めます。


■  腰部脊柱管狭窄症

加齢とともに腰椎や椎間関節の変形・肥厚ならびに椎間板の変性や膨隆、また靭帯の肥厚が発生し、これらが脊柱管内を狭くして脊髄や馬尾、神経根を圧迫あるいは締め付けたり、神経へ行く血行を阻害することにより、坐骨神経痛や下肢しびれ、あるいは歩行障害を起こすことがあります。この状態を腰部脊柱管狭窄症といいます。特徴的な症状は「間欠性跛行」といって、立位や歩行で下肢への痛みや足がだるくて歩けなくなり、少し腰を曲げたり、しゃがんで休憩するとまた歩けるようになる症状です。足の脱力感や筋力の低下でつまづきやすいなどの歩行障害、また残尿感や尿の勢い低下などの排尿障害 が見られることもあります。50歳以上の年齢の方でこのような症状を訴えたら、腰椎椎間板ヘルニアより腰部脊柱管狭窄症を疑います。


■  診断

1.問診

年齢や性別、仕事の内容、症状の起こり方(きっかけ)、症状の経過、どうしたら症状が強くなり、また楽になるかなどをお聞ききします。

2.診察

姿勢の異常(わん曲)、腰椎の動き(前かがみ、後ろそり)、押さえて痛い部位(圧痛部位)、痛みの誘発テスト、神経の症状(筋力・感覚など)などを診ます。

3.検査

1)レントゲン検査

腰椎の変形(ズレ、椎間板の高さ、骨の肥厚、靭帯の骨化など)を調べます。
高齢者の場合は骨粗しょう症(骨折)や癌の転移などにも注意します。

2)MRI

脊髄や神経、椎間板軟骨などはレントゲンには写ってきません。椎間板ヘルニアの有無や脊柱管の狭窄の状態さらに神経の圧迫の状態がかなりの程度MRIによって判明します。

3)そのほか必要に応じて脊髄造影検査やCT、神経根造影・神経根ブロック検査などをおこないます。


■  治療

発症後間もない激しい痛みの時期を急性期、しばらくたって鈍い痛みの時期を慢性期といいます。急性期には安静と薬物治療が原則です。慢性期には各種治療をそれぞれの症状に応じて組み合わせておこなっていきます。

1.薬物療法

消炎鎮痛剤(痛み止め)、筋弛緩剤(筋緊張の強い場合)、ビタミンB12(末梢神経障害)、血流改善剤(脊柱管狭窄症)そのほか安定剤を使用する事もあります。

2.ブロック療法

特に急性期において硬膜外ブロック、神経根ブロックなど痛んでいる神経に直接痛み止めをする方法です。

3.理学療法

主に慢性期におこないます。物理療法(温熱)、牽引療法などがあります。

4.装具療法

コルセットなど、急性期に腹圧をかけ体幹を支持するために用いる場合と腰椎のある位置で固定するための体幹装具があります。いずれも長期の装着は腹筋、背筋などの体幹筋力の低下をきたすため注意が必要です。

5.運動療法

慢性期におこないます。主として腰痛体操で硬くなった筋のストレッチと弱った体幹筋力を回復させ、腰椎の安定性を向上させる事で腰痛を予防します。


■  手術治療

上で述べた治療は保存的治療といって手術をしない方法です。これら保存的治療をおこなってもよくならない場合や、高度の神経症状(麻痺や排尿障害)がある場合は手術による治療が必要となります。今回は手術については詳しくは述べませんが、基本的には神経を助ける事が腰椎の手術の目的になります。

1.腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニアで手術にいたるのは約5−10%といわれています。ほとんどは後方(背中側)から切開し、腰椎の隙間から神経をよけ前方から飛び出している椎間板軟骨(ヘルニア)を切除します。最近では内視鏡や手術顕微鏡を使用する施設もあり、より小さな傷でできるようになっており、入院期間もずいぶん短縮されています。

2.腰部脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症も痛み(間欠性跛行)が保存治療に抵抗する場合や筋力の低下、排尿障害の進行が見られる場合は手術の対象となります。原理は神経の圧迫を除く事です。そのためには骨や関節、靭帯、椎間板などの一部を切除する必要があり、腰椎のがたつきが強くなる場合は腰椎の固定術も追加することがあります。腰椎椎間板ヘルニアと異なり背景に年齢的な腰椎変化があり、長期的に見れば自然によくなることが期待できない事も事実です。どなたも手術など望んではおられませんが、すでに歩行不能の下肢の麻痺や尿が出ないなどの症状が出てからは神経の回復は手術をおこなっても望めない事が多いので、手術の内容、効果や危険性など十分主治医より説明を受け手術時機を失する事がないように注意していただきたいと思います。


■  腰痛の予防

腰痛の原因は色々ありますが、その原因が何であっても、腰痛の予防・治療に大切なことは間違った姿勢を直し、「正しい姿勢」すなわち無理のない姿勢をつくることです。日常生活において少しの注意と運動を行うことでかなりの範囲の腰痛が予防できるものと思われます。腰痛予防のための簡単な日常の注意点をしるします。

腰痛予防のための注意点

1. 目覚めた時、すぐに起き上がらず、寝床の中で腰を曲げたり伸ばしたり、膝を屈伸してから起きる。
2. 起きる時、まっすぐ起き上がらず、横向きになり片膝をついて起き上がる。
3. 寝ぼけ眼で洗顔しようとした時、腰を痛めることが多い。不用意に腰を曲げる姿勢をとらないように気をつける。
4. 長時間同じ姿勢をとらない。
5. 中腰になる時は、腹に力を入れ、背筋を伸ばしたまま膝を曲げて中腰になる。
6. 椅子に腰掛ける時は膝を組んだ方が良い。
7. 重いものは体に近づけて持つこと。
8. ハイヒールは腰のそりが強くなるのではかない。
9. 布団やベッドは柔らかすぎないこと。
10. 腰が痛いときには横になって寝る。
11. 高いものを背伸びして摂らない。
12. 荷物を持ち歩く時、時々立ち止まって持ちかえる。
13. 肥満にならないように心がける。
14. 適度に運動する。
15. 体を冷やさない。


■  腰痛体操

腰痛の大部分は筋肉性のものといわれています。不良姿勢や、筋肉のアンバランスを直し、体幹を支える腹筋と背筋を鍛えることが非常に大切です。腰痛体操には主として体幹・下肢の筋肉を柔軟にする運動と腹筋・背筋を強くする運動が含まれます。


■  最後に

今回は下肢痛をきたす腰椎疾患の代表として腰椎椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄症についてお話ししましたが、腰痛には内蔵の病気も含め様々な原因があります。腰は体の「要」です。少しでも気になることがあれば整形外科専門医にご相談ください。


■  はじめにへ戻る




■科内リンク


■サイトコンテンツメニュー


■バナーエリア

臨床研修医募集
後期研修医募集
明石医療センター高機能フロア
附属看護専門学校


■当サイトのご利用にあたって


■コピーライト