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診療部|循環器内科:医療記事

重症の心不全症例に新しい治療法
-CRT-D (両室ペーシング機能付き植え込み型除細動器)について-

医長 足立 和正

心臓疾患は、現在日本人の死亡原因の2番目に挙げられ、近年増加傾向にあります。心臓病には狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患、不整脈、心臓弁膜症、拡張型心筋症、肥大型心筋症などがありますが、これらすべての心疾患が最終的には心不全へとつながっていきます。心不全とは心臓のポンプ機能が低下して全身に十分、血液を送り込めなくなり、息切れ、むくみ、易疲労感などの症状がでる状態です。心不全が重症化すると肺に水分が貯留し、呼吸ができなくなって最終的に死に至りますが、それまでに心室頻拍や心室細動といった頻脈性の致死的不整脈が突発的に出現し、突然死することもあります。

心不全の治療はこれまで、強心剤や利尿剤などの薬物治療が一般的でしたが、1994年に両室ペーシングというペースメーカーを応用した新しい治療法が欧米の学会で報告されました。これは心不全の人の一部では心臓の中の右心室と左心室の収縮するタイミングがずれており、そのためにただでさえ弱った心臓の効率をさらに悪くしているという点に注目した治療法です。両室ペーシング療法とは右心室と左心室にリード線を挿入し、右心室と左心室をペースメーカーにて同時に収縮するように刺激する方法です。この治療法は心臓再同期療法(Cardiac Resynchronization Therapy;CRT)とよばれ、これまで数々の大規模試験でその有効性が認められ、欧米を中心に心不全の治療法のひとつとして広く利用されています。


イラスト

日本でも2004年に保険適用となり、重症心不全の患者さんの治療に使用され始めました。明石医療センターでも2004年7月よりこの治療法を取り入れ、約20名のかたが植え込み手術を受けておられます。しかしこの治療法では心不全のポンプ機能の改善はできても、致死的不整脈を引き起こして突然死してしまうかたまでは救うことができませんでした。そのような患者さんには植え込み型除細動器という電気ショックを発する特別なペースメーカーが必要となります。これまで日本でも植え込み型除細動器というショック機能のついたペースメーカーは存在していたのですが、反対にこれでは心臓再同期療法が行えず、ポンプ機能不全である心不全には有効ではありません。そのため2006年8月より両室ペーシング機能付き植え込み型除細動器(Cardiac Resynchronization Therapy Defibrillator; CRT-D)が日本でも保険適用となりました。

これは心不全と不整脈による突然死の両方に対応した最新機器です。CRT-Dは植え込み、その後の管理が通常のペースメーカーに比べて複雑で難しく、心臓専門の病院であっても、どこの病院でも扱えるものではなく、厚生労働省により厳しい施設基準が設けられています。循環器内科と心臓血管外科が併設されており、さらに所定の研修を受けて学会の認定を受けた不整脈の専門医が常勤している病院でないといけません。明石医療センターではそれらの厳しい基準を満たし、CRT-D療法が日本への導入と同時に行えるようになっています(2006年8月1日保険適用)。すでに2名の拡張型心筋症のかたがこの治療を受けられ順調に軽快されています。CRT-Dはすべての心不全のかたが適応になるわけではありませんが、適応のあるかたには夢のような治療法となる可能性を秘めています。心不全で不整脈を伴った患者さんは一度不整脈外来(毎週木曜日)でご相談ください。各種検査の結果、適応があるかたには植え込み手術を考慮させていただきます。


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